ジェネラティブアートと財団の理念
「ジェネラティブアート(Generative Art)」は、コンピュータのアルゴリズムによって生成されるアート作品の総称です。主な特徴として計算性・自律性・ランダム性が挙げられます。作品の主題(テーマ)は、物理現象や絵画的技法のシミュレーション、計算によってはじめて可能になる表現、人工と自然の間での有機的な表現を追求するアートなど、さまざまです。
指示内容をまとめたプロンプトを人工知能(AI)に提供することで、画像や音楽を生成するAIアートや、パーツ画像の組み合わせによるバリエーション生成をツールを利用して作成する手法もあります。これらの創作手法は「ジェネラティブアート」と呼ばれることがあります。新たな表現手法は常に未分化の領域から登場するため、一つ一つの技法や様式の違いを理解し整理することは大変重要です。しかし、テクノロジーとともに表現手法が目まぐるしく変化・進化する現状において、ジェネラティブアートに関する明確な定義や価値観を財団のような組織が提示することは適切ではないかもしれません。当財団としては、計算を用いた新たな表現手段に宿る美的な可能性を信じ、多様に発展していくための支援を幅広く志向していきたいと考えています。
財団の目的
ジェネラティブアートは、コンピュータアートやメディアアートの発展の系譜上にある新たな芸術運動であり、現在はその黎明期にあると言えます。当財団は、適切な評価が行われるための基盤づくりとして、展覧会事業を中心的な活動として実施していきます。また、コンピュータ以降の新たな芸術表現として注目を集める世界のジェネラティブアートの最新動向を、国内に向けて発信することも、重要な財団の役割です。さらに、歴史的・文化的な観点から記録と整理を行い、近現代の美術史との接続点を紹介していくことも、活動目的の一つです。
財団の成り立ち
ジェネラティブアート振興財団は、「Generativemasks(GMs)」というNFTアートプロジェクトのアーティスト収益から拠出を受けて設立されました。GMsは発売当初から寄付型のプロジェクトとして大きく注目を集め、アーティストである高尾俊介は既にオープンソースのプログラミング環境の保守や、アートとテクノロジーの両方の学習を促進することを目的としたProcessing財団などに寄付を行っています。高尾は、言語的・地理的なバイアスを抱え、独自の文化圏で活動する日本のジェネラティブアート/クリエイティブコーディングシーンの現状を踏まえ、アジア・日本という地域にフォーカスしたジェネラティブアートの普及とアーティストのサポートを行うための組織を設立することを着想しました。
財団のコーポレート・アイデンティティ(CI)
当財団のコーポレート・アイデンティティ(CI)は設立者である高尾が、p5.jsで作成したプログラムによって生成されています。CIは生成的で改変可能であることが重要であり,それらが改変・継承されていくことが想定されています。例えば下部に掲載されている図像において、線幅や線の数は可変です。
CIの制作にあたってルールは以下の項目です。
- 図像およびソースコードが著作権を含む他者の人権を侵害しないこと
- 図像がコンピュータを介した何らかの方法で生成されていること
- J・G・A・F(Japan Generative Art Foundationの略称)の4文字が順に並んでいること
- 図像の設計図またはソースコードが公開されていること
- 設計者は有事に当財団の問い合わせに応じる意思があること
これらの点が満たされるグラフィックであれば,ジェネラティブアート振興財団のロゴとして使用することができます(2023年4月時点)。